「これからの競馬予想はAIが主流になる」と考えている人は多いと思います。
あるいは「まだしばらくは人間の方が上だ」と考えている人も、資金を奪い合う相手として少なからずAIを意識せざるを得ないのではないでしょうか。
今回ご紹介する「AI競馬」は、そのような方々が「競馬のAI予想がどのようなものかを知る」ためにはとてもおススメできる本だと思います。
AI予想を始めてみたい人にはうってつけの本
この本は、著者の城崎哲さんがAI競馬の使い手たちに行ったインタビューをまとめたものです。
ただ、そもそもAIを知らない人のために、インタビューの章に入る前の第2章で「知っておくべき知識」として、AIを知らない人のために著者がAIの概要について解説をしてくれています。
個人的にはこの「知っておくべき知識」の解説がわかりすく簡潔に書かれていてとても良いと感じました。
著者の城崎哲さんは数年前まではまったくAIについては知らなかったとのことですが、とてもそうとは思えないほど詳しく書かれており、相当勉強されたんだろうなと思います。
私自身はAIを学ぶためにG検定取得→E資格勉強中(いずれもAIに関する資格試験)という状況なので、現時点でも一般の競馬ファンよりはAIについての知識は多いと思っていますが、競馬に特化してAIの知識を得たいのであればとっかかりとしてはこの本で十分かと思います。
というのも、上記のG検定やE資格では様々な種類の機械学習について学ぶのですが、この本では「その中で競馬予想で使われている機械学習の手法は主にこれとこれ」と絞り込んでくれているからです。
これからAIを競馬予想に取り入れようとする人にとっては、まず何ができるようになれば良いのかということを把握できるので必読だと思います。
また、この本の随所で参考になるような論文や書籍に触れられているのもいいですね。
自分も「読まなきゃ」と思うものがいくつかありました。
まだまだ参入余地は大きい
次にこの本を一通り読んでみて私が一番感じたのは「AIの使い手たちもやってることは意外にバラバラなんだな」ということです。
上でも述べた通り、使われている機械学習の種類はほぼ主流の2種類に限られています。
しかし、その機械学習に「どのようなデータを投入して」「何を計算させるか」というのが各インタビューの内容を見ていると全然違うのです。
インプットデータの量を「数万」入れる人もいれば「数百」の人もいますし、細かい話を言えば前走データを使う人も使わない人もいます。
機械学習は所詮はツールなので、使う側の発想や力量が問われるということですね。
例えば、同じTARGETというツールを使っても、人によって使い方も馬券成績も全く異なるのと近いかもしれません(機械学習の方がその幅はもう少し狭いですが)。
つまり「今後はAIが主流」だと言っても、その中身は人によって大きく異なるという状況がしばらく続きそうに思います。
逆に言えば、今から参入してもアプローチ次第では十分に先人たちに追いつき、あるいは逆転できるはずです。
少なくとも今AIを使わずにある程度良い成績を残している人にとっては、AIを手に入れればさらなる成績向上を望めると思います。
別にアナログ予想とAIって対立するものではなく、双方で相乗効果が期待できるものですからね。
例えば、過去の成績、適性、血統、調教、騎手、臨戦過程、展開、馬場などのうち複数を絡めて予想する人は多いと思いますが、その予想の際に使用しているデータをAIに投入することで、それぞれの要素がどれくらいの割合で結果に影響しそうなのかを計算してくれたら便利だと思いませんか?
また、今後は馬体、調教、前走不利なども画像・映像データとして機械学習されていく流れになると思いますが、その際に何の知識もない人がAIを使って手当たり次第に学習させるのと、すでにそれらを研究している人がその知見を活かしながら学習させるのでは、精度の違いが明確に出てくると思います。
このような観点から、多くの競馬ファンはAIを身に付ければプラスになるはずですし、そのきっかけとしてこの本はぜひ読んでほしいと思います。
以上、偉そうに述べましたが、私もまだまだ勉強を始めたばかりの身ですので、この本に出てくる人たちに追いつき追い越せるよう、励みたいと思います。