「このパターンは5回に1回は来るから、オッズが5倍以上ついていたら買い」
このようなセリフを見かけることがあります。
決して誤ったアプローチというわけではないのですが、この考え方の注意点について書いてみようと思います。
目次
期待回収率と期待勝率
ご存知の方も多いと思いますが、私は「期待回収率」という指数値を算出して配信しています。
その期待回収率について時々読者からいただくコメントに以下のようなのもがあります。
しかしこれは明らかな誤解であり、私は「期待勝率」のようなものを算出していません。
確かに正確な数値を計算できるのであれば、「期待勝率を算出してからそれを元に期待回収率を計算」しても「期待回収率を算出してからそれを元に期待勝率を計算」しても、理屈上は同じ期待勝率や期待回収率を導き出せるはずです。
しかし、実際には正確に計算することなどまず不可能なので、それぞれのアプローチで結果が異なってきます。
そうなると、馬券を買う目的が「的中すること」ではなくて「長期的に利益を上げること」である以上は、期待勝率など経由せずに期待回収率を計算した方が手っ取り早いのです。
何を言いたいかがよくわからないと思うので一例を挙げると「1枠1番の馬の回収率は120%」という情報が仮に得られた場合、もうこれだけで馬券に利用できます。
馬番1番の馬を淡々と買い続けていれば利益が出るわけですからね。
一方で「1枠1番の馬の勝率は8%」という情報がもし得られたとしても、「で?」という感じになりますよね。
これがわかったところで馬券に利用することはできません。
できないのですが、これを利用してしまおうとする人がいるので、以下誤った事例を2つ紹介しておきます。
期待勝率についてのありがちな誤解
単純平均値と比較する
仮に先ほどの「1枠1番の馬の勝率は8%」というのが16頭立ての時の数字だったとします。
(あくまでも仮の数字ですよ!)
ここで「16頭立てなのだから各馬の勝つ確率の平均値は16分の1(=6.25%)だ。だから1番の馬の勝率が8%もあるなら有利だから買い!」と考えてしまうのです。
何がおかしいかわかりますか?
ここでは答えは書きませんので上の考えに納得してしまった人はご自身でちょっと考えてみて下さい。
予想値の精度が粗い
次はもう少し現実的な事例をご紹介します。
私は「単勝人気」ほど勝率が安定している指標はないと考えています。
以下は過去5年(※)の単勝人気別の勝率と複勝率です。
(※)2015年7月~2020年6月の障害を除く全レース
この単勝人気ごとの勝率や複勝率は昔からほとんど変わっていません。
毎年同じようにほぼ人気通りに勝率が並んでいるという事実からは、総意としての競馬ファンの馬を見る目に驚かされるばかりです。
一方で見方を変えれば、AIの台頭だとか「競馬ファンのレベルが上がって最近オッズが辛い」と聞こえてくる話とは裏腹に、競馬ファン全体としては大きな成長は見られないとも言えます(もしそうならば人気馬の勝率が上がるはずですが、直近1年に絞って調べても大きく変わりませんので)。
単勝人気ごとの勝率が安定しているという点に異論がある人は少ないと思いますが、ある読者からこの安定度の逆を突いたような質問をもらったので、あなたもちょっと考えてみて下さい。
質問の主旨はわかりますよね。
回収率は的中率×オッズで決まりますから、30%×4倍で120%となるのではないか、ということですね。
さて、あなたはどうお考えになりますか?あるいはどう回答しますか?
実際に「単勝1番人気でオッズが4倍以上の馬」の回収率を上記期間で調べると以下の通りでした。
件数を見てもわかる通り1番人気でオッズが4倍以上つくのは珍しいのですが、ご覧の通り回収率は120%とは程遠い成績です。
なぜ120%にならないかについてはぜひ考えてみて下さい。
あるいはこの質問自体にすぐに違和感を持って突っ込めた人も、ぜひその突っ込みを一度自分自身にも向けてみて下さい。
期待勝率を扱うのは難易度が高い
この記事冒頭の「このパターンは5回に1回は来るから、オッズが5倍以上ついていたら買い」という考えを紹介しましたが、5回に1回勝つというのは大体単勝2番人気と同程度の数字です。
よって「自分の考えているパターンは単勝2番人気よりも精度が高いのか」とか「このバターンの勝率は結局オッズに依存していないか」などと考えてみることは決して無駄にはならないと思います。
また2つ目の事例のように、オッズと切り離した状態で勝率を安定的に予想するというのは至難の業です。
繰り返しますが、私は決してこのアプローチを否定するわけではありませんし、何なら私も将来は穴馬を狙うのに機械学習でこの考え方を採用してみたいと考えてもいます。
ですが、少なくとも今配信している期待回収率では期待勝率を計算せずに回収率を直接扱っていますし、当面の間はそれを継続します。
今回の記事は以上ですが、勝率に関しては陥りがちな誤解も多いので、今後も折に触れて紹介していこうと思います。